第三回 ~交通革命と限界費用ゼロ電力

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 
 さて、前回は地域の新電力が、電気だけでなく、熱や交通もカバーする総合的な地域エネルギー会社になる可能性を秘めていることなどを、現在進行形の『交通革命』を解説しながらお話しました。
 その後、いくつもの『交通革命』、中でもEVの急拡大を示すニュースが流れてきました。今回のコラムでは、その続報とさらに「限界費用ゼロ」という少し難しい考え方と交通革命の先にある未来社会についてまとめたいと思います。

 さて、2040年には、新車の3台に1台以上がEVになると予測していると書きました。これはアメリカの著名なシンクタンクであるブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスによるデータです。
 ところが、そんな先を待たずに、ノルウェーでは今年1月の新車販売でガソリン車とディーゼル車の合計が5割を割りました。販売数ではPHEV(プラグインハイブリット)とEVの合計は37.5%となっていて、ノルウェーは未来を先取りしています。
 また、つい先日、EVメーカーの先頭を走るアメリカのテスラモータースが、アメリカのフォードと日産を時価総額で超えたとのニュースが世界に流れました。

 おさらいになりますが、交通革命はガソリン車から電気で動くEVへのシフトというだけではありません。
 自動運転やカーシェアリングによって、お年寄りでも安心して車の運転ができるようになったり、わざわざ高いお金を払って自分で車を持つ必要さえなくなったりすることなのです。これは、現在の車の在り方を根本から変えるもので、各自動車メーカーのビジネスモデルに直撃を与えることになります。つまり、自動車メーカーにとっては、これまでのように車を作って売っていればよかった時代は終わりを告げたのです。
 この変化に対して自動車メーカーはすでに手を打ち始めています。例えば、トヨタ自動車は、車の単なる製造業から脱却し、モビリティのプラットフォームサービス拡大を宣言しています。「車の所有」に対する販売サービスから、「車の移動手段としての利用」のためのプラットフォームを提供することにサービス領域を広げ始めています。大企業である世界のトヨタでさえ、社会の変化に対応せざるを得なくなっているのです。

 前回お話しした様に、ここで重要なのはEVが必要とする電気を再生エネで作り出すことができるという事です。そして、これはもう一つの革命を起こす可能性を秘めているのです。
 ご覧になった方も多いと思いますが、昨年末からテレビで流れた日産のEVのCMで、いくら乗っても電気代月2,000円のサービスがうたわれていました。また、ドイツのシーメンス社は、従業員のEVの電気を無料にすると発表しています。これは、電気代を安くしたり、タダにしたりという単なる目新しいサービスではありません。
 背景には、EVの燃料として、風力や太陽光発電(VRE)などの限界費用ゼロの電源が想定されていることがキイポイントです。

 2つの珍しい用語が登場しました。「VRE」と「限界費用ゼロ」です。両方とも、今後のエネルギーを考える上で大変重要な言葉です。簡単に説明しておきます。
 VREとは、Variable Renewable Energyで、例えば、可変的再生エネと訳されます。発電量が変化する再生エネということで、基本的に風力発電と太陽光発電を指します。風が吹いたり吹かなかったり、昼と夜で発電したりしなかったりと天候や時間によって発電量が変わる特徴を持つ電源です。
 この風力と太陽光は、次の「限界費用ゼロ」の特徴を持っています。これは経済用語ですが、「一単位の生産物(この場合、電気)を新たに作るのにかかるコストがゼロ」という意味になります。ここでいうコストには、発電設備の建設コストは含まれません。つまり、「限界費用ゼロ」は、ほぼイコール「原料費ゼロ」ということになります。風力や太陽光はタダで使えるからです。なぜこれが重要なのでしょうか。
 あなたが発電事業者で、太陽光や天然ガス発電など何種類かの発電設備を持っているとします。電気を市場に卸す時にどの発電所を動かすでしょうか。一番安いコスト、つまり原料代がかからない太陽光や風力発電から動かす(自動的に発電しますが)ことが当たり前の経済行動ですね。わざわざ原料代を払って天然ガスなどで発電する人はいません。
 長々と何を言っているのかとお思いかもしれません。でも、ドイツでは実際にこういうことが起きています。限界費用がゼロの再生エネの電力がどんどん市場で買われ、天然ガスや石炭発電所が稼働されなくなっているのです。少し脱線しました。少し難しいかもしれませんが、「限界費用ゼロ」という言葉を覚えておいてください。

 ここでお話したいのは、つまり、EVにいずれ太陽光発電などの限界費用ゼロの電力が使われるようになるという事です。整理すると、車は、個人所有からカーシェアリングとなり、最後は公共インフラになり、自動運転が拡大するでしょう。そして、燃料費は限界費用ゼロ電力により限りなく無料に近づいていくという訳です。
 地方は都会とは比べ物にならない車社会です。しかし、逆に限界費用ゼロの交通燃料を自らで製造し使えるのです。燃料費や運送費は激減し、それによって地域の経済が飛躍的な発展を遂げる可能性があるのです。もちろん、格安の電気は、当たり前ですが、家庭や事業所などでそのまま電化製品などで使い、また、熱もカバーすることもできます。
 地域は長い間、地元から流出する莫大なエネルギー費に苦しんでいました。それが、一転して、すべてのエネルギー費が格安になるエネルギーパラダイスになる可能性さえあるのです。

以上

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