第五回 ~シュタットヴェルケという地域中心主義

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 
 今回は、少しお勉強の要素を取り入れました。
 地域で新電力を立ち上げようとする方であれば、「シュタットヴェルケ」という言葉を聞いたことがあると思います。簡単にシュタットヴェルケの説明をしておきましょう。ドイツでは最もポピュラーな住民サービス事業体で、地域の電気やガス、熱などのエネルギーを始め、インフラ事業や住民サービスを合わせて行っているのが普通です。全体の6割が自治体の100%出資ですが、エネルギーなど専門の民間企業と共同出資する場合も少なくありません。私がドイツのアウグスブルクに住んでいた時は、電気・水道などを市のシュタットヴェルケと契約し、また、シュタットヴェルケが運営する市内交通に毎日お世話になっていました。
 その数はドイツ全体で800~900とも言われます。特に電力自由化を機に、地域でのエネルギー供給スタイルのひとつとして日本にも紹介されてきています。総務省を始めとした中央官庁が地域エネルギー事業の手本として取り上げており、皆さんが耳にしたり、目にしたりしている理由はそこにあります。

 日本でシュタットヴェルケについて勘違いされやすい点が2つあります。
 一つは、電力自由化後に生まれた新しいシステムではないということです。歴史はたいへん古く、最古のシュタットヴェルケは250年前に誕生しています。当初は、住民に対する安全な水の供給が目的だったと言われています。100年以上の歴史のあるシュタットヴェルケは珍しくありません。
 もう一つは、すでに書きましたが、提供するサービスはエネルギー供給だけでは無いということです。シュタットヴェルケはドイツ語で、Stadtwerkeと書きます。Stadtは「都市」で、Werkeは「仕事(複数)」なので、都市の仕事ということですね。最近日本では「都市公社」と訳されることも多くなっています。
 綴りからわかるように、仕事の内容はエネルギーに限りません。多くは他に上下水道、ごみ処理、交通、その他のサービスを行っています。日本の自治体が行っている住民サービスに、エネルギーの供給を加えたものと考えれば理解しやすいでしょう。こう見てくると、シュタットヴェルケは日本の地域新電力とは違うものだということがわかると思います。

 さて、ここで重要なカギになってくるのが、日本でも進みつつある『電力自由化』という制度改革です。ドイツでは2000年を前に電力の自由化が始まりました。実は、自由化の前までは、シュタットヴェルケはその地域の電力の顧客を独占していました。電気料金も高く設定し殿様商売でした。自由化後に激しい競争に巻き込まれることになり、少なくないシュタットヴェルケが保有していた配電網を大手の電力会社に売るということも起きたのです。シュタットヴェルケはピンチでした。
 ところが、自由化前とは大きく違った環境がありました。2000年のFIT制度の導入です。結果、再生エネ電力が飛躍的に増え、地域で生み出された電力を地域で使う「エネルギーの地産地消」が可能になってきたのです。シュタットヴェルケはFITの追い風で新しく生まれ変わり、マルチな住民サービスの旗手として地域エネルギー供給の主役に戻ろうとしています。

 歴史やサービスの種類など形式を見ると大きく違うドイツのシュタットヴェルケと日本の地域新電力ですが、日独の電力自由化を背景に役割や性格が似通ってきているのにお気づきだと思います。
 再生エネが飛躍的に拡大し、エネルギーの供給形態がはっきりと「集中型」から「分散型」に変化する中、地域に根差すという意味の重要性が日本でも増すのは確実です。
 私がドイツで見た地域の電力供給におけるシュタットヴェルケの優位性をひとつ説明しておきましょう。実は、シュタットヴェルケの提供する電気料金は決して安い訳ではありません。様々な小売事業者の中で平均かそれよりもやや高いくらいです。それでも半数以上の住民が地元のシュタットヴェルケから電気を買い続けています。これは案外単純な理由で、日頃から地域密着で顔の見えるサービス(例えば、公共交通やプール、図書館の運営など)を行っていることで馴染みがあるというものなのです。自由化以降、電気料金の安売り合戦に巻き込まれず、多くの地元顧客がシュタットヴェルケに残っているのは、この地域密着から来る安心感だと言われています。
 日本のお役所にありがちな「先進国の制度コピー」として引っ張ってきただけのシュタットヴェルケを見ていては本質を見失います。まずは、地域で成し遂げたいことを地元に立って考え、電力自由化の先の地域エネルギー供給の「絵姿」を想定することです。その上で考えれば、シュタットヴェルケの事例をどう日本で利用していけばよいかが見えてくるはずです。私たちが日本に実現させるべきなのは、シュタットヴェルケと言う形ではなく、地域中心主義という考え方や理念なのです。

以上

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