第六回 ~私たちの“常識”から外れた、再生エネ電力で
     85%をカバーしたというお話

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 
 日本では少し前に終わったゴールデンウィーク中の出来事でした。
 ドイツで4月30日の午後1時から3時までの間の2時間にわたって、電力需要の85%を再生可能エネルギーによる電力で賄ったということがわかりました。ドイツの著名なシンクタンクのアゴラ・エナギーヴェンデが発表したものです。また一日平均で見ても再生エネ率はおよそ64%で、全体の電力需要の3分の2をカバーしているのです。

 この数字になんとなく違和感を持つ方はいませんか。その感覚は大事です。
再生エネによる発電量が全体の3分の1を超えたドイツでもさすがに85%は珍しいのですが、半分以上の電力を再生エネに頼るという事は日常茶飯事です。一方、FIT制度の見直しだ、再生エネの急拡大で不安定だと騒ぎ、果ては出力制限で再生エネ発電を止めると言っているこの国の再生エネの年間発電量の割合はたかが5%(大型ダムを除く)なのです。よく耳にする日本のお役所の話だと再生エネ電力がこんなに高い割合になれば、ドイツではしょっちゅう電力システム全体に問題が起きて、停電だらけになってしまいそうですね。ドイツで停電などの障害が発生する率は、再生エネが増えても逆に下がっているといいます。私たちが聞かされる常識は本当に正しい常識なのでしょうか。
 
 もう少し、この日のドイツの状態を見ていきましょう。
 実は、ドイツで再生エネの割合が大きい日は、日本ではGWのこの時期に多く、日曜日に集中しています。季節的に天気が安定していて晴れになる確率が高いうえ、強い風が重なることが珍しくないからです。そして、日曜日は電力の需要量が大きく下がります。つまり、風力発電と太陽光発電の施設が最大限の働きで発電する一方、電気をあまり使わないためにその占める割合がぐんと跳ね上がる仕掛けです。
 では、ここでの再生エネ発電の主役はというと、前述の通り太陽光と風力です。30日の最大電力需要はお昼の12時の71.55GWで、このうち77.6%にあたる55.5GWが再生エネ発電でした。内訳は、太陽光発電の発電出力が29.76GW、風力発電が16.75GW、バイオマスが5.65GW、水力発電が3.33GW となっています。太陽光発電の占める割合は、全体のおよそ42%と圧倒的で、風力発電が次いで23%です。
 一方、夜9時になると様子がだいぶん変わり、需要もかなり下がって59.41GWに落ちました。もちろん太陽光は発電しませんが、風力発電の発電出力が増して27.77GWとなりました。総電力需要の46%を超えたのです。ちょうど、太陽光と風力が補いあって、需要に見合った発電量の曲線になった形です。

 さて、もう一度日本との比較です。
 これが日本にそのまま当てはめにくい理由もいくつかあります。まず、日本ではほとんどが太陽光発電で風力発電が極端に少ないこと、もうひとつは、ドイツではぐるっと囲む近隣諸国に送電線が通じていて余剰の電力を流すことができるという事です。この日も実際に午前11時から午後5時までの6時間にわたって13GWもの電力を送り続けました。その売電価格は下がりに下がって、一時マイナスの価格(お金を払って電力を買ってもらう)になったそうです。
 つまり、日本では太陽光発電の相互補完相手となる風力発電の割合が低く、ちょうどよい電力の供給曲線が描かれにくいこと、そして、近隣諸国に送電線が繋がっていないため余剰電力を吸収する需要先が限られているという事です。
ただし、最近は太陽光発電以外の再生エネの割合が増え、開発に時間のかかる風力発電も次々と運転を始めました。後者では、まだまだ日本では再生エネの割合が低いため、現状のレベルでは送電網を使った国内融通で十分対応できるというのが正しい認識です。IEA(国際エネルギー機関)のリポートでは、普通の国であれば特別な対策をしなくてもVRE(可変的再生エネ:普通、風力、太陽光発電を指す)を全体の3割程度にすることは十分に可能だと強調しています。日本も早く普通の国になるのが良いと思います。
 
 最後に、書いておきたいことがあります。
 この日にドイツが近隣諸国に大量に電力をマイナスの価格で売っていた件です。今回の調査発表をしたアゴラ・エナギーヴェンデの責任者は、「再生エネの割合が大半を占めるようなことは今後頻繁に起きる。また、原発のような(発電に)柔軟性の無い施設や褐炭発電所は減っていくので、マイナス価格もなくなる。」と語っています。
 ちょっと考えてみましょう。これはどういう意味でしょうか。
 ある意味で“通訳”すると、『再生エネ発電の割合が増えることは良いことだが、せっかくの電力をドイツ国内で使い切れず近隣諸国にお金を払って流している』『再生エネを国内で無駄なく使い切るため、邪魔をしている原発や褐炭発電が今後減るので安心してくれ』という事です。
 あれっ。日本ではベース電源や安定電源と呼んでいる原発が柔軟性の無い邪魔者とされているのです。ドイツが再生エネからの電力をできるだけ使いたいという理由は単純です。安いからです。まあ、これも日本の常識とは違いますが。再生エネを進めている国(ドイツに限らず、フランスやイギリス、中国でさえ)では再生エネ発電による電力は他の発電に比べてすでに安いか、近い将来最も安くなるというのが常識になっています。また、今回強調して取り上げた風力、太陽光発電は限界費用ゼロの発電といって、原料費のかからない発電システムです。
 ビジネスの世界で、追加の製造コスト(大半が原料費)がほぼゼロの商品があれば、それをすべてに優先して市場に出して取引するというのが当たり前です。そちらの方が価格競争力があり儲かるからです。
 電力で言えば、再生エネ、特にVREがそれにあたるのです。ですから、各国ではいかに安い再生エネ電力を無駄なく使えるような(出力制限をしないなど)システムを作るのに一生懸命なのです。
 分かっていただけましたか。世界の常識は『今後は再生エネ電力が主力で、それをいかにたくさん使えるようにどうシステムを組むかがビジネスとしても最重要なこと』なのです。

以上

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