第七回 ~地域新電力を経営するための鉄則

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 
 さて今回は、ある本を紹介しながらのコラムです。先にタイトルなどを書いておきます。『稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の鉄則 』(NHK出版新書) 著者: 木下斉 です。
 ちょうど2年前の2015年5月に出版された本です。タイトルは知っていたのですが、やっと読む機会に恵まれました。著者の木下さんは、長年にわたり実際に「まち会社」立ち上げて実践してきたそうです。高校生社長としてもてはやされたこともあったようですが、トライ&エラーの連続だったと語っています。
 基本は、「補助金に頼らず、自腹を切ってリスクをとりながら経営することで健全な発展ができる」ということです。国からの助成金に頼り、誰もリスクを取りたがらない地域でのまちづくり事業が次々と失敗していった反省に立って根本からやり直さないとダメだと主張しています。
 もちろん、書かれている「まち会社」は私が進めている地域のエネルギーを扱う会社そのものを指してはいませんが、地域新電力にもピタリとはまると思います。今回は、『誰も言わなかった10の鉄則』を紹介したうえで、地域新電力を立ち上げて運営していく重要なポイントをまとめてみました。

 まず、『誰も言わなかった10の鉄則』をそのまま並べてみます。(同書から引用)
 (1) 小さく始めよ
 (2) 補助金をあてにするな
 (3) 「一蓮托生」のパートナーを見つけよう
 (4) 「全員の合意」は必要ない
 (5) 「先回り営業」で確実に回収
 (6) 「利益率」にとことんこだわれ
 (7) 「稼ぎ」を流出させるな
 (8) 「撤退ライン」は最初に決めておけ
 (9) 最初から専従者を雇うな
(10) 「お金」のルールは厳格に

 こう並べてみると、ほぼ地域新電力の経営に当てはまります。
 私が運営する日本再生可能エネルギー総合研究所では、再生エネ総研講座として、「成功する地域エネルギー会社の作り方」というメルマガを発行しています(いずれこのコラムでも順次ご紹介していきます)が、そこに掲げたテーマとたいへん似通っているのに驚いています。

 ひとつずつ見ていきましょう。“小さく始めること”はまず重要です。(9)の“最初から専従者を雇うな”にも通じますが、固定費を最小限にしてスタートするのが肝心です。大きな看板を掲げた本社に、制服を着た受付、見事に動画をちりばめたWEBサイトと、それはそれはかっこいいのですが、すべて初期投資や固定費となって、経営を圧迫します。一定の顧客を取ってからで遅くありません。
 補助金は、地域新電力ではまず当てにしたくてもできません。一部の地方で地域新電力の立ち上げの補助金を出すところもあります。使えるものは使えばよいのですが、毎年の収支を黒字にしなければ続きません。
 “「一蓮托生」のパートナーを見つけよう”は、私もメルマガで特に強調している事項のひとつです。私は仲間づくりと称していますが、地域での事業と謳う限り単独の会社ではなかなか地元の共感を呼ぶことは出来ません。資本力などの点からも複数の会社でSPC(特別目的会社)を作って事業を始めるのが良いでしょう。その時に、誰と組むかは非常に重要です。何のためにやるか、事業内容の方向性など、必ず一致しておかないと後でもめる原因となって、いずれ空中分解を免れません。
次の“「全員の合意」は必要ない”と矛盾するようですが、これは、どんなに一蓮托生であっても意見の不一致は起きるので、その時の決定方法のことと読み替えます。私のアドバイスでも、地域新電力の立ち上げは複数の出資者で行うことと同時にいずれかの出資者が過半数の株式を持つことを推奨しています。新しい会社はスピード感が重要です。決められない会社は衰退します。

 (5)、(6)、(10)は、具体的な事業の進め方です。
 新しい事業で肝心なのは、必ず事業として成り立たせることです。私の進める地域新電力(地域エネルギー会社)を地元中心で作る目的は、エネルギーの地産地消によって地域経済の循環を呼び、地域活性化を図るためです。自分でいうのもなんですが、素晴らしい目的です。
よくあるのですが、目的が良ければ事業性が低くても構わず、一部がボランティアとして参加することも素晴らしいと、美化する人たちがいます。私はこういう形での設立や運営を禁止しています。何より、黒字にしなければいけません。そうでなければ、事業は続きません。さらに、他の地域へ広がることもありません。
 きちんと計画を立て準備をすれば、地域新電力はかなりの確率で事業として成り立つというのが私の考え方です。その進め方のいくつかの指針を、(5)、(6)、(10)が示していると思います。ただし、電力の売買は薄利多売であまり儲かりません。ですから、地域新電力をうまく使って、自分たちの本来の商売に繋げてくださいと話しています。出資者が儲けることは、新しいビジネスでリスクを取ることの正当な見返りです。堂々と胸を張って商売をすべきです。それが、結果として地域新電力の事業性や地域への経済効果も高めるのです。

 (7)の“「稼ぎ」を流出させるな”は、地域新電力の存在理由の肝でもあります。エネルギーで言えば、地域からのエネルギー費の流出を出来る限り防ぐという事です。人口3万人程度の地方都市で地域内総生産がおよそ年間1,000億円くらいです。そのうちの数%程度の数十億円がエネルギー(電気、ガス、ガソリン、灯油など)を手に入れるために地域外に流れ出ています。膨大な金額です。この一部でも地域に残せれば、地域の経済は大きく変わります。そのためのツールが、エネルギーでは地域新電力(地域エネルギー会社)であり、今回取り上げた書籍での「まち会社」という事です。

 木下さんとは面識もなく、何もいただいていませんが(笑)、ご興味があれば本を読んでみてください。地域の疲弊の原因とシビアな解決方法が読み取れます。

以上

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