第八回 ~原発を巡る世界と日本の風向きの話

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 
 地域のエネルギーをどう地産地消でカバーしていくかという時に、いずれテーマとなるのは原子力発電のことでしょう。今回は、原発がテーマです。
 私事ですが、もともとテレビ局で長く番組を作っていた経験があります。現在のエネルギーコンサルティングに加えて、最近までNHKや民放のテレビ番組制作をお手伝いしていました。エネルギーに関する番組という限定をつけ、結果として原発のドキュメンタリーばかりの制作になってしまいました。ドイツでの原発解体の実際や福島の原発事故後の現状も番組では取り上げました。番組を作りながら、原発の時代は長くないなと現場の感覚を持っていましたが、やはり風は原発にとって逆向きだったようです。福島の事故はそのきっかけにすぎなかったのです。

 結論から言うと、原発は衰退して行きます。危険かどうかそのものよりも事業性が悪く、ビジネスとして成り立たなくなっているからです。
 ひとつの証拠として、日経新聞の記事を見てみましょう。先月今月と、“日本の経済ニュースをリードする”日経新聞は、立て続けにこんな記事を発信しました。
『独シーメンスと米GE、「脱原発」業績けん引:5月5日』
『発電「ガス・再生エネ」2強時代 原子力苦境に:5月31日』
『米の原発・石炭 苦境鮮明:6月2日』
原発ビジネスを止めたら儲かった、これからのエネルギーは原発抜きで、再生エネと天然ガスが主流だという訳です。
 どうですか、反原発の旗幟を鮮明にしている東京新聞ではありませんよ、ビジネスクオリティペーパーの日経新聞です。記事の中身をみると、やはり、東芝の失敗が大きく響いているようです。誤った国策が、日本の“優良企業”を壊したことに対する危機感と反省が行間ににじみ出ています。
 背景には、再生エネの拡大、普及があります。二番目の記事では、「再生エネは地域によっては石炭火力と競争できるレベルまで価格が低下。原油安で化石燃料の価格も下がったが、再生エネの普及スピードには影響がみられない。この状況下で、発電設備を提供する側、発電する側とも覚悟を決めている。」とあります。「脱原発」で業績を伸ばしたシーメンスやGEを取り上げた最初の記事と読み合せると、日経新聞でさえ(日経だからこそかもしれませんが)、日本も覚悟を決めて対応しないと世界のビジネスから取り残されると宣言していることがわかります。原発の扱いでも日本がガラパゴス化して経済的なハンディを負うことを日経でさえ危惧しているのです。

 もうひとつは、先月下旬にスイスで行われた国民投票です。これは、2050年までに脱原発を実現するというスイス政府の『エネルギー戦略2050』の可否を直接国民に問うものでした。結果は、およそ6対4で脱原発政策が支持されました。現在、スイスではおよそ3分の1の電力が原発によって作られています。再生可能エネルギーを飛躍的に伸ばしてこれをゼロに持っていくという道筋が決まったことになります。実は、このエネルギー戦略は、一つの政党を除くすべてが賛成し、スイスの連邦議会では昨年秋に承認済みでした。ところが、原発を残したい唯一の政党が署名運動をして国民投票に持ち込んだ上、今流行のひどいフェイクニュースを連発して一時は僅差と言われるまでの状況でした。別の意味での現在の世界が抱える問題点が表出する出来事でもあったのです。
 欧州では、ご存知のようにドイツが2022年末までの脱原発を決め、イタリアも圧倒的多数で原発からの離脱に踏み切っています。4分の3を原発に頼るフランスでさえ割合を50%にまで落とすことを上院で決定済みです。頼りは原発の新設を進めるイギリスですが、再生エネではなく原発向けのFIT制度を作ることを提案している政府に批判が集まっています。「原発FIT」には日本の政府も関心を示していますが、これでは原発のコストが合わなくなっていることを認めていることになってしまっています。
 世界のエネルギー供給は、各地域での分散型エネルギー供給へと急激に舵を切り始めています。そんな時代の流れからも大型集中発電の象徴でもある原発は取り残されていると言えるでしょう。

以上

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