第十六回 ~失敗しない地域新電力の作り方(その1)
      なぜ地域新電力が必要なのか

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 
 今年4月からスタートした電力小売の完全自由化をきっかけにして、小売電気事業者が雨後の筍のように生まれました。誕生のペースはだいぶん落ち着きましたが、10月12日現在、422の事業者が登録されています。
 登録された小売電気事業者のすべてが、私がこれからお話する地域新電力に当てはまるわけではありません。小売電気事業者の多くは、東京や大阪などの大都市に本社を置き、これまでいろいろなエネルギーを扱っていたり、また、新事業として参入してきた異業種の会社がいたりと様々です。
 地域新電力の定義は、決まっていないのですが、少なくとも資本金の過半数が一定地域内の地元資本であることが重要だと考えます。ここは大きなポイントなので、覚えていてください。また、地元の自治体が資本参加した場合は、一般に自治体新電力と呼ばれています。
 では、422の登録済み事業者に対して、地域新電力はどのくらいあるのでしょうか。正確な統計はありませんが、定義を緩く見て全体の3割はありそうです。そして、そのうち自治体新電力が朝日新聞の調べとして30を超える程度とみられています。ただし、地域新電力のうち、地元の会社が一社だけで子会社を作って参入するケースがかなりあると思われます。

 さて、この地域新電力(自治体新電力)が注目されてきたのはなぜでしょう。
地域経済の疲弊が言われ続けてずいぶん長くなります。一向に地方の景気は良くならず、地方創生がお題目のように繰り返されるばかりでした。その中で、地域から外部に流出する莫大なお金を地域に残すといういわゆる「エネルギーの地産地消」の考え方が広がっていきました。これは、再生エネが拡大して、エネルギーの分散化が急速に進んだドイツなど再生エネ先進国に生まれ、次々と実践例が報告されるようになりました。
 地域経済復興のツールとして期待されるエネルギーの地産地消ですが、その仕組みやどうすれば実際に可能なのかについて、まだ多くの人たちの中では曖昧模糊とした状態だと思われます。その大きなカギを握るのが、地域新電力なのです。

 本コラムのシリーズ「失敗しない地域新電力の作り方」では、コンセプトの理解から始め、ゆっくりと地域新電力設立の実践までお話していくつもりです。実は、このシリーズは私が定期的に出している『メルマガ再生エネ総研』の「成功する地域エネルギー会社の作り方」がベースになっています。ただし、本コラムでは、電気の売買を行う新電力に特化します。また、地産地消の仕組みなどの基礎的なお話もしたいと思います。

 このシリーズのその1では、さわりとして、エネルギー地産地消と地域新電力との関係についてお話します。
 まず地産地消を「地産」と「地消」にわけて考えてみましょう。エネルギー(ここでは電力)の地産とは、その地域に電気を作る仕組みがあるということです。これは太陽光発電などの再生エネのように、地域で割合気軽に発電施設が設置できるようになったことで初めて可能になりました。
 さて、これまでは地域外の発電施設から電力を買ってきていたので、その代金が丸ごと地域外に流出していました。それが、地元に再生エネなどの発電施設ができることで、地元に代金が入る可能性が生まれました。なぜ可能性なのかといえば、その発電施設の所有者が誰かがポイントです。地域外の企業などであれば、施設は地域にあるものの、発電した電気を買った代金は地域外の所有者のところに流れていってしまうからです。つまり、「地産」になるためには、発電施設が地域内の所有であることが必要なのです。
 例えば、青森県は、9年連続で風力発電容量の日本一を続けています。ところが、施設の99.9%が県外資本です。一見、巨大な地産ができているように思いますが、エネルギー費の流出の観点から見れば、まったく残念な結果となります。

 続いて、「地消」を見てみましょう。
 地元で生まれた電気を地元で使うということで、今度は使う側に重きが置かれます。ここで重要なのが、その電気を供給するのが誰か(どの小売電気事業者か)ということです。例えば、実際に地元の資本でできたメガソーラーがあったとして、その電気を買って地元に供給するのが地元以外の小売電気事業者だとします。その場合は、需要家が払う電気料金はいったん地域外に流れます。ただし、メガソーラーの持ち主は地元なので、もう一度地元に戻ってきます。
 あれ、じゃあ、それでいいのでは、と思うかもしれません。小売電気事業者は、電気の調達価格に、固定費などの経費さらに利益を乗せて需要家に売ることでビジネスとなっています。つまり、経済活動が生んだ付加価値が、地域外の小売電気事業者モデルでは、域外に流れていってしまうのです。
 それを防いで、お金を地域に落とすためには、地元資本を中心とした小売電気事業者、つまり、地域新電力がどうしても必要なのです。そこに、第一義的な地域新電力の役割があります。

 ご理解いただいたでしょうか。地元資本の発電所を作って「地産」し、地元資本の新電力を作って「地消」する。これが、電力の地産地消システムを回すための基本です。ただし、何でも一気にやることは不可能です。ですから、出来るところから少しずつでも始めることが肝心です。仮に、事業のスタートまもなくで地元の電気が手に入らないことも多いでしょう。でも、地域新電力を通して地元の需要家に電気を供給すれば、少なくとも付加価値分は、地域新電力=地元に落ちることになります。雇用分や経費や利益としてです。ゆっくりですが、確実に一歩を踏み出せるのです。

以上

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