第十九回 ~失敗しない地域新電力の作り方(その4)
      シュタットヴェルケを知ろう。

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 
 いきなり、ちょっと脱線します。
 私は、数年前からドイツのシュタットヴェルケを紹介していますが、最近になってやっと日本でもこの言葉が市民権を得てきたように思います。ところが、その中身についてはまだまだあまり知られていません。一番困るのは、ドイツのシュタットヴェルケと最近設立が聞かれるようになった日本の自治体新電力とを混同してしまうことです。
 ドイツのシュタットヴェルケには200年近い歴史があります。また発電所などのインフラを多く所有し、つい最近まで地域独占で電力などを供給していたことについてまでご存知ない方々がたくさんいます。さらに自治体が保有する配電網を安価に独占的に利用することができるシュタットヴェルケもたくさんあります。これらの基盤を元に彼らは長年地域を支配してきたのです。
 一方で、日本の自治体新電力は、たとえ自治体が50%以上の資本を有していても、基本的にはお客さんゼロ(仮に自治体の全施設を供給先に出来ても地域全体では一部)からスタートしますし、発電施設などのインフラはほとんど持っていないのが当たり前で、配電網はありません。これらの差は驚くほど大きく、まずはこの2つは全く別物と考えるべきなのです。

 ということで、自治体主導で新電力を立ち上げる時は、十分に気を付けなければならないことがあります。簡単に言えば、慌てないことです。
 どういうことかと言うと、すぐにシュタットヴェルケになろうとしないことです。前述した通り、ドイツのシュタットヴェルケはインフラや顧客などのベースがしっかりしています。だからこそ、電力などのエネルギー事業の余剰金を赤字の交通などの事業に回せるのです。最初はよちよち歩きの自治体新電力に多くを求めると、あっという間に事業採算性を失ってしまいます。ですから、まずは電力供給事業にしっかり取り組んで新電力の基盤を作ることです。その後で、ゆっくり市民サービスなどに取り組めばいいのです。
 最近、電力の需給管理を自らやることが新電力の重要なポイントだというような話をよく聞きます。これも同じことです。まずは、事業を安定させることを優先すべきです。需給管理を自前でやっても、現実的には人件費や管理ソフトのレンタル代などの固定費がかかります。これらの費用がアウトソーシングする費用を上回れば、経営を圧迫します。
 自前を目指すことは決して悪い事ではありません。しかし、ちょっと計算すればわかるのですが、需給管理が可能なのは一定規模以上の売り上げがあって、そちらにお金を回すことができる新電力だけです。問題なのは、需給管理のための人を抱えてしまうと固定費の増加を招き、何かあった時に身動きが取れなくなることです。別の言い方をすると、経営リスクが増すという事です。このコラム「失敗しない地域新電力の作り方」でも近いうちに取り上げるつもりですが、とにかく事業におけるリスクを最小限にすることが失敗しない方法の大きな柱なのです。

 これを書いているのは12月10日(2017年)の日曜日です。日曜日に仕事をするのは、私も良くないと思いつつ、まあ、その話は置いておきましょう。さて、おととい、ある新聞が、日本で最も有名な自治体新電力「みやまスマートエネルギー」の経営危機について書きました。その新聞は、再生エネなど新しいエネルギー地産地消の動きに後ろ向きのメディアですが、記事の根拠はみやま市議会でのやり取りなので、内容はほぼ間違いないでしょう。
 結論から言うと、みやまスマートエネルギーが二年連続で赤字となり、資本金を超える借金で債務超過の状態だという事です。この業界(新電力業界??ってあるのでしょうか)では知らない人がいない自治体新電力なので、あっという間に話が広がっています。良くあるパターンで、自治体新電力やまとめて新電力自体は危ないというような流れにならないか心配もあります。
 それを回避するためには、なぜそんな状態になったかということを知る必要があります。記事によると債務超過の主たる原因は、予想した売り上げに到達しなかったこととなっています。私から見ると、あまりに大きい固定費のせいではないかと思われます。昨年度の売り上げがわずか数億円の会社に60名近い社員がいるというのは疑問です。小売電気事業は薄利多売のビジネスです。また、需給管理を自前でやることにこだわるのも固定費を増やす原因に見えます。
 当事者ではないので想像の域を出ませんが、このコラムで書いたように、リスクを最小限にするということの重要性を再度認識したニュースでした。

以上

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