第二十三回 ドイツからのコラム (2)
 太陽が照らない、風が吹かない時はどうするのか。

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 ドイツからのコラム、第二弾です。
 ドイツでは、2050年に電力の需要全体の80%を再生エネで賄うことを目標にしています。単なる夢と思う方もいるかも知れませんが、目標を決めた側(ドイツ政府、担当官庁)はもちろんまじめですし、国民の多くが案外実現するのだと思っているようです。前のコラムに書いた通り、昨年2017年の実績はすでに4割に近づいています。8割どころか真剣に100%が議論されているのが現実です。
 これに対して、よく日本で反論として持ち出されるのが、『再生エネは、お日様まかせ風まかせ』という言い方です。太陽が照らず、風も吹かない時はどうするのか。100%再生エネでカバーするというのは、しょせん夢物語だという論理です。
 ドイツ全土ですべて風が止まり太陽も顔を出さないというのは、ある意味で非現実的ですが、非常に小さい発電量しかしなく圧倒的に電気が不足するということは十分あり得ます。ということで、ドイツでは、そんな時どうするのかという議論が官民のいろいろなレベルで、特にこの2,3年真剣に行われています。そして年間にそんな日が平均して何日くらい起きるのか、実態を調べたうえで計算されています。おおよそ60日間というのがその答えです。
 また、少し専門的になりますが、「Schwarzflaute」という固有のドイツ語がそれらの時期を総称して名づけられています。日本語訳は難しいのですが、ドイツ人の説明を受けて、私が考えたのは「黒い凪(なぎ)」ということになります。太陽が照らない「黒い空」と風の吹かない「凪」がそのイメージです。結構、ピタリとはまっています。

 さて、この数十日は太陽光や風力発電施設がどんなにたくさん設置されたとしても、ほぼゼロの電気しか生み出さない期間となります。さて、その間はどうするのでしょう。
 電気無しで我慢するのは無理。江戸時代に戻るのかというような粗雑な議論が、先に示した日本で行われている『再生エネ100%は夢物語』になります。現実的な対応として、彼ら、夢物語派はこんな議論をしてある提案を始めました。まず、一定の火力発電所などの従来型の発電所がどうしても必要だということになります。ただし、その発電所は年間でひょっとすると60日しか動かないので事業性が無いものです。それを解決するためにこれらの従来型(特に天然ガスや石炭などの火力発電所を想定している)の発電所は、発電した電気を売るだけでなく存在しているだけでお金が入るように市場を作ろうというものです。これを「容量市場」といいます。発電に対してだけでなく、発電能力=容量で取引するのです。日本では、今どうやってその評価(もらえるお金)を決めるのかなど議論の最中です。
 実は、ドイツでも同じ議論があって実際に法案まで作られました。ところが、議会で否決されてしまい、現状では容量市場の導入は無くなりました。えええ、ではどうしようというのでしょうか。数十日の再生エネが発電しない時期(もちろん再生エネの発電所が圧倒的に多く設置され、その他の従来型の発電施設は無いという想定です)は、必ず起きるのです。それもドイツの方がずっと早くです。

 結論から言うと、『マーケットが解決する』のです。え、それこそ何だ。と思うかもしれませんが、私は実際に機能すると考えています。再生エネによる需給のインバランスは別に黒い凪の時期でなくてもいつも起きています。その時は余っているところから足りないところに融通したり、市場で買ってきたり売ったり、蓄電池などで貯めたものを使ったり、誰でも考える方法で行われています。また、いわゆるエネルギー貯蔵として、長期間大量に貯めることができる水素利用もドイツでは始まりました。
 議論に上がるこの数十日間はそれが極端になった場合です。でも、ドイツ全土で再生エネが発電しないので融通はできないし、そんなに多くの蓄電池が設置されるようになるのか疑問だという声や水素なんて高すぎてペイしないだろうとの反論が聞こえてきます。
 少し考えてみてください。本当に電気が発電できない時期になれば、その時の電気の価格は非常に高騰するはずです。驚くほど高いのであれば、それに合わせて蓄電池を用意したり(市場が安い時に大量に買って貯めておくのが良い)、水素で貯めて置いたものを電気に戻したりするでしょう。それがビジネスです。一方、一定以上の電気代になった場合は工場の操業や仕事を休んだり、自分で持っている蓄電池からの電気を使ったりする需要家も出てくるでしょう。つまり、すべて、市場が決めていくのです。その需給バランスに合わせて電気の価格は変わって行きます。大変なことが起きるこの黒い凪の時期は、大きなビジネスチャンスでもあるのです。

 どうですか、こういう数十日間は必ず来ますが、いきなり再生エネ施設で100%カバーのような状態になるわけでなく、そこまでには時間がかかります。それまでは、需給両方側がいかに事業性を保ったり、利益が出るビジネスモデルを作ったりという準備期間です。ドイツでは、すでに準備期間に入っています。具体的な対応自体はまったく夢でもなく、技術や仕組みの観点からも現実的な話です。こう考えると、本当に必要になるかどうかわからない容量市場など、そちらの方が単なる想定を重ねただけの非現実的なものに見えてきます。
 再生エネの拡大は、政府が決めるものではありません。現実としてのビジネスがマーケットの中で決めていくものです。最後にヒントを一つ残しておきましょう。黒い凪が来た時に需給側双方を一番コントロールできて、それをビジネスに変えることができるのは誰かという事です。地域の新電力はその最有力候補です。

以上

電力コラムの記事一覧

弊社事業のご紹介

バックオフィス支援

バックオフィス支援業務

新電力事業を新規に立ち上げる方
開始されている方へ

自治体新電力のご提案

自治体新電力のご提案

自治体の皆様へ

バランシンググループ

パワーシェアリングの
バランシンググループ

インバランス発生のリスクやコストを削減!