第三十四回 地域新電力の種類③ 久慈地域エネルギー(上)

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 

 再生エネの主力電源化が日本のエネルギーシーンに大きな影響を与えていたため、このところ、その話題ばかりでした。
 そこで、今回は少し落ち着いたテーマとして、過去取り上げてきた、地域新電力の種類の三回目をお送りしたいと思います。

 今回の対象は、久慈地域エネルギーです。
 名前の冒頭にある「久慈」は、岩手県の久慈市です。そろそろ記憶が薄れてきているかもしれませんが、NHKの大ヒット朝の連ドラ「あまちゃん」の舞台となった町です。いまでも各所に、「あまちゃんの〇〇〇」と番組にあやかったポスターなどが見られて、朝の連ドラの力を感じさせる名残があります。
 さて、久慈市は岩手県県北の太平洋側にある人口3万数千人の小都市です。地形的にやや隔離されていて、文化圏的には青森県の八戸に近く、何度も通ってみると故郷愛が強いかなといった印象を受けます。こういった土地柄は、微妙に地域エネルギー会社の成り立ちに影響するものです。

 新電力のお墨付きともいえる、小売電気事業者の登録が終わったのは、今年の2月ですから、まだ生まれたばかりの会社です。一方で、久慈市が持つ公共施設のほとんどと主要な民間企業の一部などに電力供給が決まり安定的なスタートが見込まれています。
 これまで紹介した2つの他の地域新電力と違っているのは、久慈市という自治体の資本が入っていることです。その割合は5%程度しかありませんが、これが新電力としての安定度を増すとともに事業の可能性を広げていることは間違いありません。
 決まった定義はありませんが、自治体の資本が入っているということで、一般的には「自治体新電力」と呼ばれることになります。東北地方では、県単位のやまがた新電力に続く2つ目の自治体新電力です。市町村単位では初めてで、それが大きな強みになっています。
 
 きっかけは、地域で最も大きい民間企業である地元ゼネコンさんの考えからでした。どこの地域でも判で押したような危機が迫っている、それが日本の地方の現状です。久慈市でも人口減と経済の縮小がじわじわと町を覆い始めています。
 何とか活性化ができないかとゼネコンさんから相談を受けた筆者が、エネルギーの地産地消、具体的には地域新電力の立ち上げを提案したのは2年ほど前だったかと思います。その後、現在再選された市長さんや商工会議所などと議論を始め、最終的に、久慈市に本社のある企業5社+久慈市による地元資本100%の会社(SPC)が立ち上がりました。

 はたからは比較的とんとん拍子に出来上がったようにも見えるのですが、そこには重要な要素が隠れています。
 何より、民間と自治体の意思と強い指導性です。
 発案が地元の有力企業であり、中心として汗をかいたことが、地元に安心感を呼びました。それは宮城建設という久慈市に本社を置き長く地元に根付いた地方ゼネコンさんで、岩手県内で1,2を争う売り上げを誇っています。新電力でも筆頭株主として運営の中心となっています。この会社が声を掛ければ、地元が耳を貸してくれます。
 そして、声を聞いた久慈市は、遠藤市長が「地域からのエネルギー費の流出」「エネルギー地産地消」などについて積極的に勉強をして、最終的なSPCへの資本金支出にはっきりとGOサインを出しました。

 ここで重要なのは、一般的には、首長だけの号令だけでは、なかなかこの手の自治体新電力は実現しないという各地の実態があることです。ご存知のように、バブル期を中心に第三セクターに手を出して、大失敗を繰り広げたトラウマを抱えている自治体が山ほどあります。少なくとも小さい資本の株式会社であれば、結果や責任は第三セクターとは全く違うのですが、そんなこんなで、『あつものに懲りてなますを吹く』ケースは、枚挙にいとまがありません。
 今回は、露骨にそういうことはありませんでした。
 一方で、首長がOKでも担当者が動かないことは珍しくありません。この自治体新電力が実現した最大の功労者のひとりは、市役所の実務担当者だと思っています。本当に真剣に走り回ってもらい、議会の各会派への働きかけもすべて行ってくれました。
 さらに、地元の商工会議所も非常に前向きでした。地域新電力が何を意味するのかという周知のためのセミナーをやり、最後に、久慈市、自治体新電力を一緒に「エネルギー地産地消による地域活性化を目指す協定書」も結びました。

 だいぶん長くなりました。
 立ち上がりの経緯がここまでです。次回三十五回に続きます。

以上

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