第三十五回 地域新電力の種類 ③久慈地域エネルギー(中)

 

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 

前回の三十四回に続いて、地域新電力の種類③の久慈地域エネルギーについてお話しします。

 この会社は岩手県の久慈市にある自治体新電力で、この街はNHKの朝の連ドラ「あまちゃん」の舞台でした。いつまでも「あまちゃん」に頼っているわけにもいかないのは当然のことで、今後はこの自治体新電力が、地道であっても地元を代表するような存在になればと、本気で期待をしています。

 前回は、岩手県県北の太平洋側に人口3万数千人の小都市で久慈地域エネルギーがどのようにして生まれたかをまとめました。
最も大きな特徴は、久慈市の資本が入っている(5%程度)会社ということで、この結果「自治体新電力」と呼ばれます。東北地方では、県単位のやまがた新電力がありますが、市町村単位ではここが初めてです。これに地元資本(久慈市内)100%という条件を加えると、東北ではここだけ、全国でも数社しかない非常にレアな形態です。
 
 今回のコラムでは、久慈地域エネルギーの現状と目指していることなどを聞いてもらいます。
 久慈地域エネルギーに自治体の資本が入っていること、また、久慈市や地元の商工会議所と協力協定を結んでいることなどをベースに、大半の久慈市の公共施設の電力供給を久慈地域エネルギーが行うことになりました。9月には公共施設のすべての切り替えが終わり、さらにSPCに参加する民間企業の事業施設などを加えて、基本的な事業が成り立つレベルまで達する見込みです。すでに今期の黒字化は見えています。自治体との協力関係によって、立ち上げ当初から地域エネルギー会社の経営は大きく安定することになります。

 この会社が目指すものは、大きくまとめれば、『エネルギーの地産地消による地域経済循環と地域活性化』です。どの地域新電力も同様の目的を掲げていますが、地元資本率が低いといわゆる「付加価値」が地域外に流出するので、経済効果が大きく減退します。その点、地元資本100%のこの会社は地元貢献度が非常に高くなるといってよいでしょう。
 もうひとつの目標は、電気以外のエネルギーを視野に入れている点です。もともと名前を〇〇新電力にせずに〇〇エネルギーとしたのは、将来に電気以外の熱や交通エネルギーも扱うことを考えているからです。
 このコラムでもたびたび取り上げていますが、私たちが消費するエネルギーの最終的な形を見ると、電気は4分の1にしかすぎず、実は、熱の形が4割から5割、交通エネルギー(現状はほとんどがガソリン)が全体の3分の1くらいです。久慈地域エネルギーでは、電気に加え、熱や交通にも関与して、すべてのエネルギーを地元で生産し消費することを目指しているのです。
 久慈地域では、すでに民間の熱供給会社が立ち上がっており、地域の木質バイオマスを使った大規模なシイタケ栽培が行われています。また、余剰の熱を市の温水プールで使う木質チップの乾燥などで使うなど熱利用の拡大が進んでいます。交通については、新設される道の駅の再生エネ化(EV利用)などの検討が始まったところです。
 どうでしょう。地域、自治体新電力は電力の小売り事業で収束するものではありません。それどころか、電力小売りは始まりでしかないのです。また、自治体とのコラボで、子育て支援など地域サービスを協力して進めるプランも検討されています。

 もう一つ重要なのが、再生エネ施設の拡大策です。
 パリ協定という強力な要請もあって、CO2削減は国家レベルの必須の約束となっています。国同士の約束は県に降りてきて、市町村で実行を迫られています。今、この要請で自治体が頭を悩ませるのは、これまでの補助政策の効果が薄れてきていることです。先日、ある九州の県庁を訪れましたが、屋根上太陽光施設の設置に関する融資補助の利用者が激減しているとのことでした。FITの買取価格が下落する中、設置の伸びが落ちているのです。
 久慈地域エネルギーでは、行政とタッグを組みながら新電力を使った新しいシステムで屋根上の太陽光施設を増やす策を探り始めました。小売りという電力の「地消」だけでなく、電力を作る「地産」側にも注力していくことを考えています。
 「電気」「熱」「交通」のすべての形態のエネルギーを「地産地消」するシステムの要として、久慈地域エネルギーは大きな目標を掲げているのです。

 どうしても、もう一つ書きたいことがあります。だいぶん長くなったので、次のコラムに回します。これは、地域、自治体エネルギー会社がもたらす地元への『付加価値』についてです。岩手県の政策と絡めながらお送りすると予告をしておきます。

以上

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