第三十七回 北海道の地震とBCP

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 

 北海道で震度7を観測する地震がありました。驚かされたのは、崩れ落ちる山々や人的な被害だけではなく、エネルギーの観点からは北海道全域に及んだ停電でした。過去形で書いていますが、影響は年内ギリギリまで及ぶ可能性が十分あります。
 私は関東にいて、電気が使える状況でメルマガをゆっくり書いていられるので、本当の意味での不便を実感できていないのですが、生活すべてに影響を与える電気と言うエネルギーが使えないことの恐ろしさを多くの人々が感じているでしょう。
 そこで、今回はエネルギーに関するBCPのお話です。

 BCPとは、Business Continuity Plan:事業継続計画 と言って、災害時などにどう事業を継続させるかを考えることです。今回の停電を例にとると、回復までにどうやって電気をカバーして影響を最小限に留め、本来の事業(生活を含む)を続けるかの計画となります。
 今回の停電の中で、泊原発が稼働していれば良かったとか、再生エネがもっと普及していればこんなことにはならなかったという議論(実際にはあまり実のある議論には見えませんが)が続いています。BCPのお話から言えば、現実的にどちらもBCPとしてはほぼ機能していなかったのは間違いなく、現場を無視した空中戦のようなやり取りはむなしくさえ感じます。

 さて、個々の生活でのBCPはどう考えればよいのでしょう。やはり屋根上の太陽光パネルを思い浮かべる人が多いでしょう。実際に、太陽光発電をお持ちの家では、独立運転モードに切り替えれば、1,500Wまでの電力は使えるようになります。通常の契約電力は、3,000Wから5,000Wなので大きく及びませんが、テレビや携帯電話の充電などには十分なレベルです。
 問題は、太陽光パネルを持つ家庭はそれほど多くないということです。個別の屋根がないマンションではほぼ不可能ですし、何より設置のための100万円を大きく超える資金を用意するのは簡単ではありません。
 さらに、太陽が沈む夜は発電しないのは自明のことですから、それをカバーするには蓄電池が必要になります。EVは大きな蓄電池を内蔵しているので、コストパフォーマンス的にも有効ですが、こちらも普及には時間がかかりそうです。

 そこで本題です。
 家庭を中心とした屋根上の太陽光発電を劇的に増やせる可能性がある仕組みがあります。これは、TPOとの略称で呼ばれることの多いシステムで、太陽光発電施設の第三者所有モデルです。英語のThird Party Ownershipの頭文字を取っています。あるお家の屋根にまさに第三者がお金を出してパネルを設置することを意味します。
 ここで勘違いをする人がいますが、これはいわゆる屋根貸しとは違うものです。屋根貸しでは、例えば、学校の屋根を民間の業者に賃貸料を取って使わせます。そこに太陽光パネルを設置して民間業者がFIT制度などで売電し、利益を出す仕組みです。TPOでは、通常、発電した電気はその家の人が使います。パネルは、自分のものではないので電気代は設置業者さんに支払いますが、それを通常の電気料金より安く設定することで、その家の人にもメリットが出ます。また、多くのTPOの仕組みでは、10年後や15年後などの一定期間の後に太陽光パネルをその家に無償で譲渡することを前提としています。

 ここでのポイントは、地域の新電力が大きな役割を果たすということです。地域新電力は、まず夜など足らない電気の供給を行います。また、ここが重要なのですが、屋根上からの電気をその家に送る際は、いわゆる託送料抜きで供給が可能になることです。託送料の説明はややこしいのですが、送電線の使用料と思ってください。実は、これが電気料金の3割以上を占めています。これによって、電気代を下げたり、パネルの無償譲渡できたりが可能になります。この仕組みを行うのは、地域の新電力が最も適切で、新電力が絡まないとこの仕組みは成り立ちません。
 整理しましょう。この仕組みでこれまで太陽光発電の恩恵に浴せなかった人たちが再生エネを使うことができ、同時に安い電力と災害時などの緊急時にある程度の電気が使えるようになるのです。一般家庭だけでなく、先ほど示した学校などの公共施設でのTPO利用も問題なくできます。
 一方で、再生エネの主力電源化が政府の方針となり、CO2削減が求められている自治体にとっても、これは願ってもない朗報です。屋根上の太陽光設置の補助金や利子補助をPRしても、最近はFIT制度の買取価格が下がっていることから予算を使いきれていない実態があります。TPOであれば、予算措置をしなくても再生エネの拡大が図れる可能性が十分あるのです。

 地域新電力の利点は、公共施設などの電気料金を下げるためだけではありません。このように、地域のBCPを自治体とコラボしながら進めることもできます。これは地域新電力の新たな役割であり、今後の大きな可能性を示していると言えるでしょう。

以上

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