第三十八回 ソニーと丸紅が起こした再生エネショック

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 

 『RE100』への参加11社目はソニーでした。
 企業活動に使う電力をすべて再生可能エネルギー由来にすることを目標とする世界的な企業の集まり『RE100』への加盟が加速しています。国内にも大きな生産設備を持っている世界企業ソニーが、9月10日にRE100に参加することを正式に発表しました。2040年までに再生エネ電力100%を目指すといいます。
 昨年の春にリコーが日本企業で初めての参加を宣言して以来、わずか1年半での急増ぶりです。ついに大量の電気を使う日本企業の雄が加わることになったのです。

 ソニーという名前と影響力を考えると、これはある意味で「ソニーショック」と呼んでよいかもしれません。ショックなのは、まず参加にあたっての理由です。それは非常に強い危機感に基づいています。RE100に対応しなければ、将来、資金調達ができなくなり事業が立ち行かなくなるという迫るリスクが背景にあるのです。「企業継続に絶対的に必要な投資」ということです。
 思い出すのが、日産自動車のサプライチェーンでの再生エネの必要性です。ある国際会議で日産の担当者がこう語りました。「EVはCO2フリーの電気を使えて環境にやさしい。しかし、そのEVをどんな電気で作っているかが問われる時代になった。再生エネで製造されないEVは価値がないと言われかねない。」再生エネ由来の電気を使うかどうかは、おまけやお飾りではなく、企業活動の根幹にかかわる選択肢になってきていることがよくわかります。

 一方、同じ9月初めに商社の丸紅が、石炭火力発電からの撤退を宣言しました。今後、新規の開発を行わないだけでなく、持っている石炭火力発電所の権利を2030年までに半分にするといいます。その分を再生エネ分野への人や資金の投資に振り分ける計画です。
 世界の金融機関は、石炭関連のプロジェクトや企業への投資や融資を急激に縮小しています。石炭火力が温室効果ガスのCO2をまき散らす悪として糾弾されているというのが表(おもて)の見え方です。しかし、実際は、石炭プロジェクトが近い将来事業性を失い儲からなくなるから、そんなリスキーなものには金は出せないというわかりやすい理由です。

 ソニーは、海外を含めた製造拠点や事業所に太陽光パネルなどの設置を進めたり、自己託送という制度を利用したりして、再生エネ電力を各地の事業へ供給する検討に入りました。一方、丸紅は、保有する発電出力に対する再生エネの割合が現在は1割程度ですが、今後5年間で倍の2割にすることを目標として掲げています。

 さらに、最大の発電容量を持つ大手電力会社が、ここにきて再生エネに本格的な注力を始めています。東京電力は、洋上風力を中心に大型投資を行うことを発表しました。また、関西電力や中部電力なども同様の動きを強めています。
 ドイツの4大発電会社、特にRWE、E-onが再生エネへの投資を長い間怠ってきて、その結果大きな赤字を招きました。長い伝統があり最も安定していると信じられてきた大企業の経営の屋台骨が、再生エネへの無関心からあっさりと揺らいだことを日本の大手電力会社が知らないはずはありません。政府がエネルギー基本計画に「再生エネ主力電源化」をはっきりと記したのは、ある意味で「渡りに船」だったのかもしれません。

 今後、再生エネ電力を使う側と発電したりコントロールしたりする側の両サイドで大きな動きが起きることになるでしょう。使う側ではRE100への参加が今後もさらに増えるのは間違いありません。大きな企業で参加の検討すらしないというのは、企業としての将来の活動を放棄するに等しい扱いさえ受けるようになるかもしれません。
 再生エネ電力を必要とする側が増えるということは、再生エネ電力を提供することが大きなビジネスになることを意味します。再生エネ発電への取り組みと再生エネ電力を集めて融通することに関わる事業は、大変有望な成長ビジネスになります。
 これまで再生エネの事業というと、FIT制度に乗ったメガソーラーなどがまず頭に浮かぶでしょう。それらはバブルとかブームとか言われましたが、今回の勢いはそんなものではありません。なぜなら、参加するプレーヤーの多くが、巨大な資本力や信用力を有する日本を代表する企業だからです。
 再生エネが主流であるという世界の常識にやっと日本も追いつき始めました。これはもう絶対に戻ることのない流れと断言できます。もちろん、この事業へ手を挙げ参加できるのは大企業だけではありません。再生エネの特徴をうまく使ったり、次々と浮かんでくるニーズを掴んだりできれば、ベンチャーであってもアイディア勝負で新しい市場を作り出すことが可能です。もちろん、分散化が特徴の再生エネを考えれば、地域のエネルギー会社、地域新電力はまさしく「地の利」を持っています。
 再生エネ先進国のドイツでは、そんな新しい競争がすでに激しさを増しています。再生エネへの強い欲求をどう新ビジネスに結び付けるのか、そんな時代に日本も突入しているのです。

以上

電力コラムの記事一覧

弊社事業のご紹介

バックオフィス支援

バックオフィス支援業務

新電力事業を新規に立ち上げる方
開始されている方へ

自治体新電力のご提案

自治体新電力のご提案

自治体の皆様へ

バランシンググループ

パワーシェアリングの
バランシンググループ

インバランス発生のリスクやコストを削減!