第四十回 九州電力の「出力制御」で何が起きているのか。

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 

 北海道の地震によるブラックアウトに続いて、今度は九州で太陽光発電の出力制御が2週間続けて行われました。エネルギーに関するある意味で負の話題が連続して流れたことになります。
 最近、この手のニュースが取り上げられると、再生エネを積極的に進める側とそれに疑念を持つ側との間で、SNSなどを舞台に激しい議論が行われるのが常です。いつも思うのですが、物事にはいくもの側面があり、AかBか100%正しいとか間違っているということにはならないものです。全道規模での最初のブラックアウト、最初の出力制御という初めて尽くしのことなので、どうしてもいい悪いを決め付けたくなる気持ちもわかりますが、もう少し冷静に対応した方がよいと思っています。

 さて、今回の出力制御は、九州電力管内での発電と電力需要が大きくバランスを崩す可能性があったために起きたことです。具体的に言うと、太陽光が大量に発電することが予想されたのに対して、電力の需要がかなり低いことが背景にあります。春や秋は気候も良くてエアコンも必要なく、一方で土日は休みの企業が多いために電気もあまり使わないということです。ドイツで再生エネ電力が全体の八割九割以上を占める記録を出すのも、だいたい春や秋の休日と相場が決まっています。
 九州電力をはじめとする大手の電力会社の管内では、再生エネ発電施設を作る申請をした時に、近年では出力制御は設置の条件として入っているものです。ですから、単純にけしからんということにはなりません。私としては、再生エネ電力が4割に迫るドイツで起きたことが日本でも起きるということで、一部の地域とは言え、ずいぶん再生エネの影響力が拡大したと感慨深い部分さえあります。

 この2週間にわたる週末は、何もしないで置けばやはり停電の危険はあったのだろうと思われます。問題は、事前に出力制御を避けるための十分な努力がされたかどうかということです。
 九州電力は、余剰電力分を揚水発電でため込んだり、他の地域の大手電力事業者へ送電したりしても大きな需給のギャップが出ると予想したと理由を述べています。ここは、今後の検証などを待ちたいと思いますが、他地域への電力融通が十分であったかどうかは大きなポイントとなりそうです。日本の電力システムは、地域独占する大手の9つの電力会社がその管内で需給バランスを合わせることを原則としていました。他の電力管内との電力のやり取りは極めて例外的にしか扱われてきませんでした。原発事故の後でも連系線の利用率は非常に低いままです。また、利用しにくい手続きが何年たっても残ったままです。
 この夏の猛暑の際に、一部の大手電力会社が他の大手から電力を融通されたことがありました。「停電を免れた綱渡り」と危ないことがあったように一部のマスコミが報じましたが、電力融通の効果があったことを示す、とてもポジティブな実例と考えるのが正しいと私は思っています。つながっている連系線を使わない方がどうかしているのです。

 もう一つ書いておきたいのは、出力制御はいずれ珍しくなくなるということです。需給バランスが崩れることによる電圧の変化が予測される事態は、再生エネ先進国ではごく日常的に起きています。そこで調整力(例えば発電の細かいオンオフ)が必要になり、調整力自体が大きなビジネスになっています。最近よく取り上げられるVPP(バーチャル発電所)は、その調整力を使ったビジネスモデルでもあります。電力の需給の責任を負う(日本では発送電分離前の)大手電力会社は、調整力を求め年に一回入札を行っています。ちなみにドイツでは毎週入札があるそうです。
 そうはいっても、ドイツでものべつまくなし出力制御が行われるわけではありません。細かい天気予報を前提にした発電予測やそれに伴う市場での電力取引、前述した調整力の機能的な運用などでできる限り多くの再生エネ電力を使う努力が進んでいます。実際の出力制御は全体の3%未満といったところのようです。
 日本でも今回の九電の出力制御2週分の影響は、太陽光発電施設を保有する企業の発表によると、損失発電量0.1%程度と軽微ということです。たまたま先日見た再生エネ関連のテレビ番組である太陽光発電業者は、2割の出力制御になると事業が成り立たなくなるとインタビューに答えていました。あまり大騒ぎせずに冷静に何が起きて、どこに問題があったのか無かったのかを把握する努力を進めるべきだと考えます。
 今後、日本でも調整力を売るVPPビジネスが盛んになり、また蓄電池の価格が十分下がってくるなど出力制御への対応が進むと思われます。限界費用ゼロの安い電気をなるべく使うべきだというのは経済原理に照らし合わせてもごく当たり前の議論だからです。

 今後も地域での再生エネ発電施設は拡大していきますし、拡大していかないと国際的な経済競争力にも響きます。地域新電力はそのための核になる存在です。繰り返しますが、慌てずに冷静に対応することです。また、解決しなければならない課題があることは、それだけ地域でのビジネスチャンスが拡大しているのだと前向きに考えることが大事なのです。

以上

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