第四十六回 地域新電力の役割とビジネス(リプライズ)

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 
   前回のコラムでご紹介したようにドイツでは再生エネ発電の40%越えという結構景気の良いデータが出てきています。一方で日本はというと、エネルギー全体ではかなりネガティブな状況も起きています。
   例えば、海外に売り込もうとしていた原子力発電の事業が次々と失敗して最後の希望だったイギリスのプロジェクトも事実上の撤退が決まりました。福島事故によって国内のビジネスがほぼ閉ざされたことがきっかけでしたが、それで海外に活路を見出そうということ自体がやっぱり無理筋で、予想通りの結果になりました。

   小売りの全面自由化でスタートした小売電気事業もすべてがうまくいっている訳ではありません。各新電力の昨年の決算で、小売り電気事業者の筆頭のF-Powerや東急電鉄が力を入れる東急パワーサプライが大幅赤字となりました。また、日本版シュタットヴェルケを標榜する福岡県のみやまスマートエネルギーとその関連出資会社の経営や事業内容が問題になることも起きています。小売電気事業は一種の選別の時代に突入したといってよいでしょう。
   このコラムで何度も書いているように、提供する付加価値が電気の安売りしかない新電力は、ビジネスの幅を狭めて厳しい環境に直面することがわかってきました。地域性や地元への貢献などは決してお飾りのお題目ではなく、実際の小売り電気ビジネスの武器になるのです。

   今回のコラムでは、この状況を踏まえたうえで、もう一度地域新電力の役割と今後のビジネス領域について少し書いてみたいと思います。
   新電力は、正式には「小売電気事業者」として資源エネルギー庁に登録を行う会社です。よって、もともと電気の小売りを生業(なりわい)にするものです。そこを外すことは基本的にできませんが、小売りだけに安住できるほど楽なビジネスではありません。電力の小売りは利幅が薄く供給先のボリュームを持って初めて成り立ちます。そこで過大な安売りをすると、前述したようなきつい経営を強いられることになります。

   では、新電力の中で地域をベースとする新電力の持つメリットとは何でしょう。地域への密着性があり、地域へ付加価値を落とす役割が果たせるため、安売り以外で地元へのアピールが可能です。これは、案外大きな意味を持ちます。
   最近ある地方で、新電力への切り替えに関する消費者へのアンケートを取ってみたところ、興味深い結果が出たのです。同じ程度の値引きをした時に地元または都道府県内の新電力を検討する割合が、全国的な新電力を大きく上回りました。また、割引が無いとしても地元の新電力へ切り替えるという回答もあり、現実の切り替えの場面でもこれは決して珍しくありません。

   さらに、広いエネルギービジネスの観点から地域の新電力にこそ重要な役割があることを付け加えておきます。それは、分散型の性質を持つ再生可能エネルギーと強い関連があります。
   まず、一定の地域で再生エネの発電所を増やす時の重要なプレイヤーになり得ます。地域新電力自らが発電所を持たなくてもそのきっかけを作ったり、一端を担ったりすることができます。再生エネも地域新電力も同じく地域に根差しているという共通点があるのです。もうひとつは、再生エネの利用拡大を支援することができ、それがビジネスになるということです。
   後者はどういうことかというと、こちらも何度かコラムで取り上げた『柔軟性』の拡大を意味しています。再生エネは風力発電や太陽光発電のように天候や昼夜など自然の変化で発電が変動するという課題を持ちます。これを人為的に調整するなどして再生エネ電力を捨てたり減らしたりせずになるべくたくさん使えるようにすることが柔軟性です。具体的には、余った電気を足りないところに融通したり、DR(デマンドリスポンス)と言って電気の供給に合わせて需要の調整をしたり、余剰の電気をEVなどの蓄電池に貯めたりというものです。
   では、誰が主体的に柔軟性を担保し、コントロールをするのでしょうか。融通、DR、電力貯蔵というキイワードを現実に変え、最も効率的に電力をハンドリング出来る存在として、現実的に思い浮かぶのが地域の新電力なのです。地域新電力は日常の活動で、一定エリアの中で発電した電力を調達し地域の需要家に配っています。融通は確かに離れたエリア間でもできますが、効率の面から地域内で行う方がよいに決まっています。つまり普段の電力の扱いの延長線上で『柔軟性』拡大に寄与し、いわゆる『調整力』を提供することが可能です。そして、それぞれがビジネスになるのです。電気を小売りするだけではないこれからのビジネスです。最近もてはやされてきたVPP(バーチャル発電所)を行うのも地域新電力が適任だと私は信じています。

   地域新電力は、地域に根差すことで地域の顧客の心をつかみやすいだけでなく、今後の再生エネ関連ビジネスへの足掛かりを作るツールです。電力の小売りだけで頭を悩ますことなく、広い事業を俯瞰するチャンスをぜひ2019年に考えてみてください。私も応援しています。

以上

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