第四十七回 広域連携のキイパーソンは誰か

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 

   今回のコラムは2月初めに流れたばかりのあるニュースを取り上げます。
   まず、各紙の見出しを並べてみましょう。

      日経新聞:東北から再エネ供給 横浜市、12 市町村と協定
      読売新聞:再生エネ普及東北と連携 横浜市、12市町村と協定
      毎日新聞:連携協定 再エネ電力購入で 横浜市、横浜町など12市町村/青森
      デーリー東北:横浜市に電力供給 岩手県北9市町村 再生エネ、広域連携

   なんとなくどんなニュースかは想像がつくでしょう。まず、横浜市と東北の12市町村が再生エネの電力供給の連携協定を結んだこと。電気の流れは、発電元である東北の市町村で、使う側は大都市の横浜市であること。これを広域連携と呼んでいることなどです。地方版もありますが、各新聞が一斉に取り上げたということは価値の高いニュースだと言えます。
   もう少し詳しく内容を説明します。
   巨大な都市である横浜市は、自らの力だけでは再生可能エネルギーによる電力を供給するのは無理だという決定的な背景があります。横浜市もそれを認めています。このため、今回、再生エネ電力を供給する「余力」の可能性を持つ東北の市町村と連携するというのです。記事では、横浜市の年間消費電力量のおよそ160億kWhに対して、連携する市町村のトータルのポテンシャルはその4倍以上あるとしています。

   さらなるバックグラウンドは、このコラムで何度も取り上げた「再生エネの主力電源化」と「RE100」のブームです。再生エネの主力電源化は、単に再生エネ電力が安くなってきたからというだけではありません。温暖化対策のための「脱炭素社会」の切り札として、再生エネ拡大が必須となっているからです。パリ協定は、このことを世界で約束したものです。そして、その約束を民間企業の立場から実現しようとするのが、RE100です。現在、どんどん増えて世界で162社が参加し、その中には日本からの14企業が含まれています。
   もちろん、パリ協定順守の枷(かせ)は、民間企業にとどまりません。政府や自治体は率先してその先頭に立つよう義務付けられているのです。見えてきたでしょう。横浜市は人口がさらに増加中で400万人に近づこうとしています。人口密度が高く企業活動も盛んな集中型の大都市は、再生エネを域内で拡大したくてもそのポテンシャルが無いのです。そこで目を付けたのが、人口減が続く地方の再生エネ資源というわけです。

   日経新聞のWEBメディアのひとつ、日経ニューメディアは今回の連携協定を、(横浜市による)地方の再エネ「囲い込み」(*見出しの原文まま)と称しています。中央の大都市自治体による地方の再生エネ資源の取り合いが始まったという見方です。
   「連携」とは言っていますが、そこには参加自治体の様々な思惑が見え隠れします。その中で確かなのは、再生エネという地域資源を自ら保有し、高い発電ポテンシャルを持つ地方の『力』です。分散型エネルギーの時代に地域がいかに強い存在であるか、ついに形で示したといえるのです。今後はこのようなケースが各地でどんどん増えていくでしょう。

さて、多くの記事のタイトルで、電力を受ける側の横浜市はいわば実名入りですが、供給する側は、風力発電が盛んな青森県の横浜町以外はまとめて市町村とされています。実は、その中に本コラムで登場したことのある岩手県の久慈市が含まれています。記事の多くには記者発表の写真が付けられていました。久慈市の遠藤市長は、横浜市の林市長の左二つ隣りに並び、協定書を掲げてニコニコ顔でした。ただし、重要なのはそこではありません。覚えているでしょうか。久慈市には、市内の民間企業と久慈市で設立した新電力があるのです。
遠藤市長はインタビューで、横浜市への電力供給に久慈市が資本参加している自治体新電力、久慈地域エネルギーを活用することに意欲を示しています。
   もし、自治体新電力が無かったらどうでしょう。
   これまでのように大都市という強い存在に翻弄されてしまうリスクが残っていたはずです。久慈市は自治体新電力というツールで、大都市との連携での主導権を握る可能性を手にしています。そのツールがあるからこそ、横浜市と堂々と渡り合えるのです。

以上

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