第五十二回 自治体はなぜ新電力をためらうのか(下)

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 テーマ「自治体はなぜ新電力を作ったり、関与したりするのにためらうのか」の最終回です。
 一連の今回のコラムを書くきっかけになったエピソードは、実はこの最終回の中にあります。
 繰り返しですが、『自治体新電力を作るために、自治体に求められる5つのこと』を並べて書いておきます。この最終回は、4番と5番です。
1.知識 
2.第三セクターからの脱却
3.危機感
4.仕事への前向きさ
5.勇気

4.仕事への前向きさ
 自治体で日々頑張って働いている方を侮辱するつもりは全くありません。実際にこれまで大変お世話になってきています。一方で、過去の経験で、もう少し前向きに考えてもらえないか、などと思わざるを得なかったことがあったのも事実です。
 地域や自治体新電力の立ち上げや事業運営の際、また地域活性化のための協力を自治体にお願いしたとき、一種の壁が立ちはだかることもありました。
 逆のケースをお話しましょう。
 ある自治体新電力の立ち上げをお手伝いした時のことでした。エネルギーに関する部署にいたある自治体職員の働きにどれだけ助けられたことか。部署内だけでなく、他の部署や首長、議会への根回しまで、まさに八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍でした。多くの関係者が「もし彼がいなければ、自治体新電力は出来なかった」と断言しています。私も正直そう思いますし、いつもそう話しています。
 他の地域でも、自治体が関与した新電力が設立されたところには、似たような一種の武勇伝が眠っているようです。私の“自治体新電力を作るための必要条件”には、「積極的な首長」、「熱心な担当職員」の2つが必ず入っています。どちらが欠けてもなかなか難しいものです。よく、市長が絶対にやりたいと言っているからと相談を受けますが、職員が後ろ向きでうまくいったケースを私は知りません。
 熱心な職員さんというのが、どのくらい当たり前なのか、または珍しいのか、統計など存在するわけもありません。自治体新電力の実現にあたってそこに頼る割合が大きいのは必ずしも望ましくないのですが、実態はその通りです。

5.勇気

 3月6日に東京で開かれた自然エネルギー財団のシンポジウムで、大変面白いやり取りがありました。世界中から、再生エネを進める政府機関や民間の有識者、実際に活動の先頭に立っている人たちが集まって議論を行いました。今年の中心テーマは、再生エネで100%を目指すということでした。世界の多くの地域で再生エネ電力が最も安くなったことを背景にした取り組みです。
 毎年、このシンポジウムには日本の経産省の再生エネ関連部署の幹部が招かれます。ところが残念なのはその発言です。今年も幹部は、世界で誰も言わない「エネルギーのベストミックス」を強調した上、「再生エネはコストが高いので、100%実現のためには、驚くような、今はだれも知らないような技術革新が必要だ」と何度も繰り返しました。参加者のすべてが、現実的なテーマとして再生エネ100%の具体的な道筋を議論しているのに、です。実際に会場には失笑がこぼれていました。
 実は、これには伏線がありました。その前のパネルディスカッションで、デンマークの系統運用会社の責任者が、「どうすれば再生エネ100%が実現できるか」という質問に対し一言で答えを示して、会場を沸かせていたのです。その答えは、「勇気」でした。
 再生エネ100%実現には、対応する技術などの前提条件はすべて整っている。足りないのは一つだけ、(政府や政治家などの)勇気だけだと言ったのです。それを聞いていたはずなのに、経産省の幹部は、「驚くべき技術革新が必要」と語って、それこそ驚かれました。

 長々とエピソードを話してしまいました。
 これが、自治体新電力の設立に必要なことと完全に一致するというわけではありません。しかし、これには、お役所の後ろ向きの姿勢、その言い訳のため無理矢理作った理屈という共通的が透けて見えます。

 自治体新電力の設立には、知識や危機感、職員の前向きな姿勢が必要なのは、これまで書いた通りです。これ以外に、何か特殊なノウハウやシステム、もちろん驚くような技術は必要ありません。残るのは、ただ自治体のトップをはじめとした「勇気」だけだと、私は最後に強調しておきたいと思います。

以上

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