第五十六回 複雑化する電力市場制度と問題点(上)

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 来年2020年は、電力に関する事業を行っている人たちにとって大きな変更がある年です。そのうちいくつかのことがかなり前から予定されていました。もちろん、必要な制度変更もたくさんあります。それでいて、細かい内容やどうやって実施されるのかわからないものが多く、戸惑っている事業者さんは少なくありません。
 すべてが新電力に絡むわけではありませんが、最低限知っておかなければならないことばかりです。
 今回のコラムでは、どんなことが起きようとしているのか、まずは概観してみたいと思います。また、一部、問題点を指摘することができればと考えています。

 さて、最も大きなイベントは『発送電の分離』というものです。アンバンドリング(unbundling)というカタカナで書かれることもあります。これまで、いわゆる大きな電力会社が持っていた「発電」と「送電」の機能を分離するものです。東京電力が分社化したり、東北電力が送電部門を子会社化したりと動いています。電力自由化の基本のひとつです。
 ただし、ここで特に取り上げたいのは、電力市場のことです。

 電気の取引に関しては基本となる「一般社団法人日本卸電力取引所(JEPX)」が「卸売電力市場」として活動しています。前日やスポットなどの取引を行ってマーケットを使った電気の卸売り価格を決めています。扱い量も最近急激に増えています。ややこしいのは、これに加えてたくさんの別の市場を作られようとしてることです。
 来年以降の市場創設として検討されているのは、「ベースロード電源市場」、「調整力リアルタイム市場」、「非化石価値取引市場」や「容量市場」です。今回は、個別の市場については詳しく説明を行いません。コラムの字数程度では書ききれないからです。ただし、トータルとしてなぜこれらが作られようとして、どこに問題があるかの“さわり”程度はお話しできると思います。

 そもそも、電気の需給を取り扱うためにこんなに多くの市場が必要なのでしょうか。
 例えば、再生エネ電力が全体の40%までになったドイツを見てみましょう。必ず必要な卸売市場はライプチヒにあり、再生エネ導入拡大に欠かせない調整力市場が機能していますが、これ以外に特に市場はありません。
 ベースロード電源市場と非化石価値取引市場は日本独自のものとなると聞いています。さらに容量市場は一部の国で取り入れられていますが、日本が検討しているものとは必ずしも同じではありません。ドイツは、実際に議会で議論されましたが、不公正な制度の可能性を指摘され、導入されませんでした。

 日本で多くの市場創設が進められている背景には、長年続いたエネルギー政策のひずみがあるように思えて仕方がありません。一つは、原発や化石燃料による旧来型の発電システムを過度に大事にしてきたことです。利点としてベースロードという価値を強調する結果、今回の市場創設に至る可能性があります。すでに再生エネを主力電源と考える国では、「ベースロード」という考えは古いものとして扱われているのにです。
 容量市場を見るとさらに良くわかるかもしれません。この市場はマーケットとは名ばかりで、再生エネが拡大して設備利用率がどんどん落ちている化石燃料やコスト高がはっきりした原発に対する巨額な補助金制度に陥る危険性が非常に高いものです。
 先日、私は、広域機関、電力広域的運営推進機関による容量市場の説明会に行ってきました。化石燃料や原子力による大型の発電施設を保有、またはこれから建設する大きな企業の担当者が、この「補助金」がどうやってもらえるのか、目をギラギラさせて会場を埋めていました。
 容量市場は、簡単にいうと大型の化石燃料や原子力による発電施設を持っているだけで(運転させなくてもよい)、全体で年間数千億円にも上るお金がもらえるというものです。太陽光や風力発電のような再生エネ電源が天候に左右されるため、それをカバーする安定的な発電設備がなくなっては困るというのが理屈です。お金を貰えるこれらの発電設備は、近年再生エネ発電の拡大でコストが合わなくなっていて、このままでは消えていくという認識がその裏にあるからです。

 へえ、やっぱり化石燃料発電や原発は高いと政府も認めているんだと感心してばかりはいられません。
 数千億という実質的な補助金は、小売電気事業者が払う仕組みに設計されているのです。このままでは、年間の利益をはるかに超えたお金を黙って納めることになるかもしれません。
 まずは、知ってください。そして、次に声を上げていく必要もあります。
 コラムの後半では、これも独特な非化石証書の話をしたいと思います。こちらも驚きです。

以上

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