第五十七回 複雑化する電力市場制度と問題点(下)

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 来年2020年に向けての電力関連制度の変更の話を続けます。
 前回のコラムでは、特に多くの新しい電力マーケットが誕生すること、そのうち特に「容量市場」という、石炭火力発電や原発に対するある意味での補助を行うような制度についてお話しました。そのお金は、小売電気事業者から自動的に徴収されることになります。今想定されている負担額は半端ではありません。

 さて、今回は非化石証書を取り上げます。
 この証書はザクっといえば名前の通り、化石燃料でない、つまりCO2を排出しない原料で作った電気という証明書です。その大きな役割は、再生エネの価値を示すためということになっています。そして、来年以降の市場制度の変更での、「非化石価値取引市場」に繋がります。
 なぜこんなことをやろうとしてるかを説明するには、遠いドイツのFIT制度での再生エネ電力の定義を知る必要があります。
 ご存知の方が多いと思いますが、日本のFIT制度では、固定価格で買い取られた電力、いわゆる「FIT電源は再生エネ電力と呼んではいけない」、「再生エネの価値は無い」ということになっています。なぜなんだろうと不思議に思う人も多いでしょう。エネ庁の説明はここではあえて割愛します。一方で、こちらを知る人の数は減ると思いますが、ドイツのFIT制度で作られた電力は、再生エネの価値が認められています。
 はて、これこそなぜなのかと思うでしょう。日本とドイツとそんなにFIT制度が違うのかと。実は、これを解き明かすには、誰が再生エネ価値を保有するかということを考えなければいけません。

 まず日本では、小売電気事業者を念頭にFIT制度による電力を再生エネと言ってはいけないとしています。その結果、電気を使っている私たち需要者も再生エネと呼べないことになってしまいます。
 ところが、ドイツでの考え方は実に合理的です。まず、FIT制度は賦課金を払うことで成り立ち、その結果、再生エネによる発電が促進されていることを確認しましょう。これは、FIT制度の基本なのでどの国でも全く同じです。そして、負担する者がそのメリットを得るという基本的な概念『受益者負担』の考えから、賦課金(負担)を払う電力の需要者が受益者として再生エネの価値を保有することとしています。電力の消費者が賦課金を払っているので、私たち(企業も同じ)が使っているFIT電力分は再生エネと呼んでいいということです。
 つまり、ドイツで行われていることが当たり前で、日本の制度は歪んでいるという結論になります。非化石証書は、FIT電源の非化石価値を切り離して取引できるようにしたという定義です。お気付きだと思いますが、その価値は賦課金を払っている私たち電気の需要者が持っているはずのものです。私たちが所有するものを勝手に取り上げて取引するということは、おかしな話です。ですから、「歪んでいる」と書いたのです。

 ドイツの再生エネ電力の割合は、FIT制度の効果ですでに40%を超えています。家庭のコンセントから使える電気の一定の割合はFIT電源からのものなので、それはオートマティックに再生エネにカウントされます。賦課金を払っているのだから当然そう主張できます。FIT制度を使う発電事業者から途中の小売電気事業者もFIT電源分は再生エネ分と言えます。ところが、日本では小売電気事業者が非化石証書を買うなどしないと再生エネ電力を供給していることにならず、私たち需要者も再生エネを使っていることにならないのです。バカみたいな話です。
 これをドイツのような当たり前の「受益者負担」の仕組みに戻せば、非化石証書も非化石価値取引市場もいらないことになります。さらに、今盛んに議論している非化石証書を再生エネ発電所に結び付けるための「トラッキング(追跡)」も必要がなくなります。なぜなら、FIT電源の割合がそのまま需要者の使っているFIT電源による再生エネの割合になるからです。

 なんとおかしな制度で、面倒くさいことをやっているのでしょう。日本は。
 背景は、いろいろ想像されます。証書を売って賦課金を少しでも抑えたいというのはまだましな方でしょうか。
 再生エネ証書でなく、非化石証書という名前になっていることとの関連も考えられます。非化石の定義には、再生エネだけでなく原発からの電力も入ります。よって、原発の価値を強調するためというのはうがちすぎでしょうか。

 今回のコラムでは、とにかく「FIT電源に再生エネの価値が無いというのはおかしい」ということを覚えてください。これが原因で、証書や取引市場、トラッキングなどさらに変なこと無駄なことが行われるということを知るだけで、このコラムを読んだ価値があると思います。

以上

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