第六十三回 FITが終わると何が起きるか(下) ~再生エネの価値が決め手

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 FITが終わって起きることのまとめ編です。
 FITが大枠で終わろうとしていることは前回書きました。なぜそうなっているかも課題を含めて整理しました。今回は、まさしく本題の何が起きるかです。

 まず、誰もが気になる次のシステムです。
 すでに書いたように、再生エネ電力はだれが見ても足りないので、FITに代わる制度を立ち上げて増やす努力をします。

 新しい仕組みは、ドイツなどですでに行われているFIP(フィード・イン・プレミアム)をお手本にすると考えられます。これまでのFIT制度のように、太陽光発電なら1kWh当たり○○円という決まった価格で買い上げられるのではなく、市場での売買を原則とします。ただし、事前に決められた価格を市場価格(売却価格)が下回った時には差額が補填されて、事業の安定性を保つ仕掛けです。その補填のことをプレミアムと呼びます。そして、「事前に決められた価格」は何かというと、ドイツなどと同様に入札で決めることになります。
 入札を少し詳しく説明します。すでに大型の太陽光発電施設では入札が行われています。ある場所で太陽光発電設備を建設したいという場合、そこで作られた電気をいくらで売るかという値段を入札するのです。この価格は利益込みで、先日行われた入札では1kWhあたり10円台の値段も登場しました。同様の入札がFIPでも行われるでしょう。
 FIP制度導入後、仮にある業者が14円で落札したとします。この14円が決められた価格(基準価格)です。発電された電気は市場で売られます。その時に、例えば16円など高く売れた場合はその業者の利益が想定より増えます。しかし、市場価格が10円、13円という低い値段でしか売れない場合もあります。この時にプレミアム(補填)がされ、基準価格の14円が保証されることになります。

 この制度ではいくらで入札するかが事業性判断となりますが、落札できるかどうかも含めてそこに難しさがあります。また、入札自体が手間と費用が掛かることもデメリットです。
 さらに、市場価格の変動リスクはプレミアムで吸収されるとはいえ、マーケットが公平かつ透明であることを前提にする制度ですから、日本の市場がその段階に達しているかは疑問が残ります。

 さて、FIT制度はとにかく再生エネの発電所を増やすということが絶対的な目的でした。
 そのため、電気の需要側とはほとんど関係なく、高く電気を買い取ることを通じて発電側のみに刺激を与えてきました。その結果、特にFIT制度スタート初期のメガソーラーは超安全なビジネスでした。20年先までの利益が固定的に保証されるのですから、そんな楽な事業はないわけです。つまり、再生エネの発電事業を行うか行わないかの『基準』は、FIT価格だったのです。
 さて、FITが終わるとその基準がなくなることになります。当たり前ですが、今後の基準は発電した電気をいくらで買ってくれるかです。お気づきのように、発電側主導で進んだ再生エネ発電事業は、一転して、電気を使うお客さんがいくらで買うかが決めることになるのです。

 そこである重要な基準が登場します。
それが「再生エネの価値」です。これまで電気はみな同じで色も付いていないとよく言われてきました。だから安く提供できるものが勝つと。ここにきて、風向きは変わってきています。ご存知のように、再生エネ電力ですべての企業活動を行うRE100に、世界的な企業がこぞって参加し始めました。日本企業のRE100参加は24社までに膨れています。さらに、自治体や官公庁、中小企業が参加できる再生エネ100%の協議体『再エネ100宣言RE Action』が10月9日に発足しました。FITという基準が消えようとするときに、再生エネという新しい価値が表舞台に上がってきたのです。これは決して偶然ではないでしょう。

 すでにFITでの電力売却を前提にせず、再生エネ電力をビジネスにする事業者が現れてきています。RE100に加盟している企業などに対して、再生エネ電力を直接売る事業が具体的に始まっています。

 今後の発電事業のひとつのポイントはこの付加価値をどう把握するかです。非化石証書やJクレジットの入札の動向も一つの指標です。一方で、顧客となることが確実なRE100や再エネ100宣言RE Actionの加盟企業や自治体などの団体が考える買い取りの価格はより確実なデータになります。例えば、TPO(第三者所有方式)やPPA(電力販売契約)は、より顧客と密着して再生エネ電力を供給する仕組みです。FIT後の世界は、電気を売る側が顧客の志向を確実に捉えて、顧客を開拓する世界となるでしょう。

 再生エネの価値は、それを生み出す地域の価値でもあります。遠く離れた場所から大量の原料を運んできて電気を作り出す、マスのエネルギーの時代は過去のものになりつつあります。再生エネは、その性質上地域のエネルギーです。そのエネルギーを利用して、価値を生み出し活用するポテンシャルは地域にあることを忘れないでください。

以上

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