第六十六回 「自治体の電力調達の状況に関する調査報告書」を読む(上)

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 10月末に、大変興味深い調査報告書が発表されました。
 「自治体の電力調達の状況に関する調査報告書」という名のリポートで、一橋大学自然資源経済論プロジェクトや朝日新聞社、国際環境 NGOの FoE Japanなどが調査にあたったものです。
 調査の基本は、47 都道府県と20の政令指定都市に対するアンケートで、すべての調査対象(47+20=67)から回答を得ています。テーマとなっている「自治体の電力調達の状況」では、まず都道府県と政令指定都市の本庁舎がどこから電力を調達しているかをまとめています。
 すでに自治体新電力が存在しているか、これから設立されるとみられる自治体の6割近くも答えを送ってきています。ここでは、自治体新電力がどの程度各市町村に広がっているかがわかります。

 自治体の電力調達について具体的にここまで調べたものはこれまでありませんでした。現状を知るうえでとても重要な調査結果だと言えます。
 今回のコラムでは、地域新電力の拡大を支持する立場から、この中からいくつかの結果を取り上げ、さらに筆者のコメントを加えてみたいと思います。重要な内容を含む調査です。ボリュームを考えて、上下二回に分けてお届けします。

 調査内容に入る前に、調査を行った主体からの『提言』を抜き書きしておきます。
 報告書の冒頭に書かれているもので、日頃から筆者自身が自治体に求めてきているものとほぼ重なることがよくわかると思います。
「①自治体の電力調達は地域の計画や経済のあり方と密接に関わり、価格のみを重視すべきではない。②環境配慮や再生エネ、地域の新電力などを考慮した総合的な観点からの調達が望まれる。③自治体新電力の設立も有効な手段で、広がりを期待する。」の3点です。

 調査結果に入っていきましょう。まず、都道府県と政令指定都市の本庁舎の調達先(原則として2019年度)についてです。
 47都道府県のうち40が、20政令都市のうち14が大手の電力会社から調達していました。合計54となり、全体のおよそ8割にのぼります。数字の通り、大手の電力会社(旧一般電気事業者)が圧倒的です。しかし、そのうちおよそ半分の26がいわゆる『取り戻し』によるものです。過去にいったん新電力へ切り替えて調達していたものが、再び大手の電力会社に戻っているケースです。
 大手の電力会社の取り戻し営業が最近強烈に進んでいると言われることを数字で証明した形です。筆者が関わっているエリアの地域新電力でも実際に自治体関連施設との契約が一般競争入札で、エリアの旧一般電気事業者にひっくり返されています。それも普通に考えれば赤字の非常に安い値段が提示されていて、異常なダンピングだとしか思えません。この手の取り戻しは、全国各地で行われていて、資源エネルギー庁に対して多くの抗議が寄せられています。

 一般競争入札では、ほぼ価格だけしか考慮されません。その結果、この方式の調達先決定は単なる安売り合戦しか呼びません。報告書でも強調されていますが、これを防ぐためには「総合評価落札方式の実施が有効」だと考えられます。報告書では、総合評価方式のいくつかの実施例が取り上げられています。
 例えば、東京都庁の第一本庁舎では、2019 年度から総合評価落札方式を導入しています。その結果、再生可能エネルギー100%の供給をおこなう新電力(日立造船)と契約しています。また、 静岡市では2016年度に総合評価落札方式に移行していて、こちらは地元の新電力(鈴与商事)と契約を行っています。こちらは7年契約と長期にわたっています。
 調査結果では、一部に環境に配慮した形を取り入れて契約を全体の半数ほどが行っているようです。しかし、環境配慮を加えた自治体でも『取り戻し』は拡大していて、また、地域の新電力との契約もあまり増えていません。
 原因のひとつはFIT電源に再生エネの価値がないとされていることとも考えられます。地元に「再生エネ電源」がほとんどなく、環境配慮型の提案が簡単ではないことも背景にあると考えられます。このコラムで取り上げたように、日本でのFIT電源のおかしな考え方が自治体の電力調達にも影響を与えていることがよくわかります
 また、筆者も実際に体験しましたが、総合評価と言いながら価格点の割合がかなり高く、結局大きな値引きをしたところが勝ってしまうことが多いというのが実感です。自治体の部署の中には、とにかく電気代が安ければよいという考えに凝り固まっているところも少なくありません。調達のやり方の改善には、自治体内での発想の転換が必要だとも言えます。
 
 後半のコラムでは、自治体新電力がどのくらい浸透しているのかなど実態についてお伝えします。

以上

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