第六十七回 「自治体の電力調達の状況に関する調査報告書」を読む(下)

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 前回のコラムに引き続き、10月に発表された「自治体の電力調達の状況に関する調査報告書」の解説を筆者のコメントやデータを加えてお届けします。
(上)では、47 都道府県と20の政令指定都市(合計67)へのアンケートで、旧一般電気事業者(いわゆる大手の電力会社)による取り戻し営業が非常に活発なことがわかりました。
 今回のコラムでは、すでに自治体新電力が存在するか、これから設立される市町村に対しての調査を取り上げます。ここでは、自治体新電力が現状でどの程度広がっているかを見ていきたいと思います。

 繰り返しになりますが、一橋大学や朝日新聞など調査を行った主体からの『提言』をもう一度示しておきます。とても重要だからです。
 「①自治体の電力調達は地域の計画や経済のあり方と密接に関わり、価格のみを重視すべきではない。②環境配慮や再生エネ、地域の新電力などを考慮した総合的な観点からの調達が望まれる。③自治体新電力の設立も有効な手段で、広がりを期待する。」の3点です。

 本調査結果のパート2のテーマは「自治体新電力や再エネ政策など注目すべき自治体」となっています。
 そこでは、自治体新電力を持つ39の自治体がピックアップされています。具体的な名前は、報告書を見てください。

 一点、気になることがあります。報告書での自治体新電力の定義は、「自治体が出資などで関与する新電力会社」となっています。「出資など」の「など」がポイントで、実際には自治体がまったく出資していない自治体新電力(岩手県宮古市、北上市、秋田県湯沢市など)もあります。
 定義は公的に決まっているものではないので、それぞれの判断です。筆者が講演や原稿などで一般的に使っている定義は「自治体が一部でも出資している新電力」です。また、地域の資本が過半数になっていない新電力は、地域新電力と言い難いともお話ししています。これは、新電力がどこを向いて事業を行うか、また利益を地域内でどう使うかという問題に結びつくからです。それを考えると県外資本中心の新電力は自治体がどう絡むかは別にしても、微妙な存在かもしれません。
 前述した岩手県宮古市や北上市は100%県外資本、それも東京の大手企業が出資しています。一方で、秋田県の湯沢市では市は出資していませんが、地元企業だけで新電力を構成しているようです。自治体がお金を出していないことは同じでも、地域への還元という観点から大きな違いが出る可能性があります。

 39の例の中には、自治体の資本が過半数を占める新電力もいくつか散見されます。老舗の様相を呈している福岡県みやま市をはじめ、大分県の豊後大野市、三重県松坂市、千葉県銚子市などがそれにあたります。日本版シュタットヴェルケを目指すという掛け声も聞かれ、今後の動きが注目されます。
 実は、地域資本100%で構成される自治体新電力は案外少ないのです。鳥取県の鳥取市、米子市など数か所程度にとどまります。岩手県久慈市のように参加する民間企業がすべて久慈市内に本社がある企業というのは、さらに非常に珍しいケースです。
 特徴的なのは、東京など大きな都市からの企業が参画する自治体新電力です。静岡県磐田市では94%の資本をJFEエンジニアリングが保有します。新電力が大型のバイオマス発電所を有するため仕方がない面はあります。しかし、実際の電力小売りはJFEエンジの100%子会社が行うということを考えると、どこを向いた事業になるかは想像の範囲内でしょう。また、大手コンサルタント会社のパシフィックコンサルタンツの子会社パシフィックパワーが資本参加する自治体新電力も現在10か所ほどで動いています。こちらは、地元資本がほぼ過半数を占めており、地域に顔を向けていることを売り物としています。ただし、多くのケースで自治体は経営にはかかわっておらず、パシフィックパワーに丸投げ状態だと聞いています。

 また、調査では自治体の保有施設と自治体新電力の契約形態に関するものがあり、たいへん気になるところです。
 39の自治体新電力のうち自治体の本庁舎の電力を自治体新電力から調達しているのは32自治体で、その調達の決定は、すべて随契でなされています。ここは大きなポイントです。

 自治体新電力の普及状態に戻りましょう。
 この調査で漏れているものも少なからずあります。秋田県鹿角市や大分県由布市などです。また、これから立ち上がることが決まっているものもいくつか把握できているので、これらを合わせると全国で50ほどの自治体新電力が存在するかまもなく出来上がるとみられます。
 全国の自治体は1,400弱あるので、その割合は3~4%程度とまだわずかです。ただ、報告書でも書かれている「設立する動きが全国に広がっている」というのは、筆者自身も実感しています。よく、新電力の経営は厳しいと言われますが、地域を中心とする地域新電力や自治体新電力は、単なる新電力とは別のカテゴリーといってもよいと考えます。
 今後、この動きは続き、さらに活発化するでしょう。地域を大事にする地域、自治体新電力こそ、主流になることは間違いありません。

以上

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