第七十二回 制度の勉強をすることの重要性

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 当たり前ですが、このコラムは一つ一つが別個に存在しているのではありません。いわゆる横串を刺しているのは「地域新電力」ですが、それだけではなくコラムのすべてに関連性があるのです。
 前回は、地域新電力が電気の小売りだけをやっていてはいずれ行き詰まるということをお話ししました。事業の展開や事業フィールドの拡大なくして新電力の将来はない、と言い切ってもよいと思います。

 そのためには、世界の当たり前の情勢を頭に入れたうえで、さらに日本の政府や担当省庁がどう考え、どんなシステムを動かしていくかを知らなければなりません。自分の理想だけをいくらこねくり回しても、制度に合致しない事業はやはり独り相撲に終わって利益を生むことができないからです。
 そういう意味では、今年はとても重要な年です。なぜなら再生エネを中心とする多くのエネルギー制度の変更がスタートしたり、準備されたりしているからです。2020年は再生エネを巡るシステムが大きく変わるスタートの年なのです。

 一番早く直接的なインパクトのある変更は、FIT制度が終了に向けて大きく動き出すことです。なんだ電力の買取制度が変わるということでしょう。小売りを行う新電力には直接は関係ない、と思ってはいけません。前回のコラムの流れから、まず「新電力=小売り事業」だけと決めつけることは自らの首を絞めることにつながることを理解していただけるでしょう。それだけではありません。新しいFIP制度への移行は、再生エネ電力拡大の支援策の変更に留まらないのです。
 政府が増え続ける賦課金を減らすことを一番に考えて制度を変えるとしても、今回の変更の裏には再生エネの捉え方、“再生エネの思想の徹底”があります。そこでは、再生エネの分散型=地域密着性や非常時に役立つ性質が重要視されているのです。新しい制度で登場した『地域活用電源』という言葉に象徴されるように、地域経済循環やBCPに対応する再生エネ電力に対しては、FIT制度を残すなど優遇措置を延長させることが組み込まれることになりました。

 少し考えてみましょう。地域からの流出エネルギー費の削減や非常時の電力供給は、ただ地元で発電しているだけでは達成できません。そこには、地域の電力をコントロールするための地域の新電力が必要なのです。資源エネルギー庁は、当然のこととして「『地域活用電源』は、需給一体型モデルの中で生かし利用していくこと」を求めています。
 今年以降新しくなるアフターFIT(FIT後の制度)を機能させるために、地域新電力の地位は確実に上がっていくでしょう。ただし、制度を理解していないと、その「地位向上」をビジネスに生かすことに繋げられないかもしれません。

 新しくやってくるFIP制度では、原則として発電した電力を市場で売却することになっています。つまり発電事業者は、これまでのようにただ決まった値段(FIT制度の固定価格)で売り安定収入を得ることができなくなります。また、発電の予測値と実績のインバランスが出た場合、これまではなかったペナルティを課せられることになるのです。
 ここまでは発電事業者の新しいリスクですが、リスクがあるところにはその回避ビジネスが生まれることを思い出してください。この場合、複数の再生エネ発電の変動をトータルでならしたり、コントロール(蓄電やDPなど)したりするアグリゲーターが新しい事業者として登場し、例えばVPPなどの柔軟性を事業化することが考えられています。事業内容から考えて、地域の新電力がこのアグリゲーターの役割を担うのは自然の流れです。
 お気づきのように、新しい制度という知識を得ることで新しい価値を生む事業への参入が可能になり、逆に知らないことで機会を失うことになりかねないのです。

 もうひとつ、今後増える電力の市場制度についてです。新設される市場は日本独自のものが多く、はっきり言って無用なものや新電力にダメージを与えかねないものも含まれています。
 例えば、「容量市場」があります。再生エネ先進国のドイツではCO2をまき散らす化石燃料などの発電施設を無駄に生き長らえさせるものとして政府が議会への法案提出を止めたいわくつきのものです。細かい内容は、ネットなどで調べてください。石炭火力や原発などの発電事業者は、発電施設を持っているだけで大きなお金を得ることができるのですが、そのお金は新電力を含む小売電気事業者が自動的に負担するのです。全体で何千億円という莫大なもので、今年、発電事業者側の入札が始まります。
 このままでは本当に制度が実現し新電力の多くが多額の支払いで事業性を失う危険さえあります。
 コラムをお読みの皆さんは、知ってましたか。あとから、「聞いてない」は通用しないでしょう。制度を知らないことによる大きなリスクがそこには潜んでいるのです。

以上

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